イェーテボリ大学が誇る応用生体工学研究所にブローネマルク教授の研究室があります。ここは、可能性を最大限に追求するために設立された学問と研究のための機関です。
ある時、ブローネマルク教授はこう語りました。「自分の専門領域に本当に真剣に取り組むならば、必ず成功するものです。」45年以上にわたり、ブローネマルク教授はこのインプラントシステムの為に、インプラントのコンポーネントならびに術式の改善に打ち込んできました。彼の名声はなんと20年にもおよぶ莫大な研究成果の賜物です。歯牙欠如に伴う大きな問題点は他人には、はっきりとは判りにくいものです。
多くの症例において、歯牙や顎骨を失ったことと同様に、自信の喪失を認めることがあります。歯科医師は工学的および生物学的な問題点だけを扱うのではなく、30年も40年も無歯顎に悩むであろう患者を人間として扱わなければなりません。
私にとってもっとも印象深い出来事といえば、何本かのインプラントフィクスチャーを支台とした新しい歯牙を20年以上も使ってきた患者が、それを初めて装着した時の感激をいまだに忘れずにいてくれるということです。 私はこれらのことを本当に嬉しく思っています。私の名前の付いたインプラントの骨支持様式の補綴物術式に関して、予測可能な予後を高いものとするためには、厳しい鉄則を守り通そうという決心を、彼らは私に与えてくれました。また、患者との結びつきは、このインプラントシステムをより良いものとするための、インプラント外科的ならびに補綴的術式のさらなる開発を続けさせる励みにもなっています。
基本的な考え方は年月とともに、わずかづつ変化してきています。例えば、組織に対するきわめて丁寧な処置、注意深い形成、ならびに治癒を妨げないようにする配慮などを挙げることができます。 埋入窩を形成する際には、浸襲を最小限とするためにデザインされた鋭利な器具だけを用います。そして厳重に管理され、製造されたインプラントコンポーネントは、短期あるいは長期的にみても組織に拒否反応を起こさせない特性を備えています。骨に穿孔し、そこに何かを埋入するといったことは論点ではありません。
基本的に重要なことは、患者の残された人生を生体組織とインプラント人工材料とが調和して共存し続けることにあります。1960年代に私どもが最初の症例を手がけた頃には、安定性を術式の根本的な目標においていましたが、すぐに良好な咀嚼と発音の回復が重要であることに気づきました。また、治療が完全であるためには審美的にも優れていることを患者は望むものです。
インプラントの全術式を通してこれらの事項を心に留めておくとにより、インプラントの予測可能な修復を施すことができます。この第3の歯による修復により、歯牙喪失に伴い、失っていた正常な口腔機能、自信さらに生活の質を多くの患者に取り戻させることが可能となります。これが骨結合タイプインプラントの最初となります。 |