インプラントが生体に埋入されたのち、どのような結果をたどるかということに、興味や好奇心がことさらに寄せられる傾向がある。これは新しい臨床医学の宿命なのかもしれない。骨の吸収、感染などが口腔内で起こることは日常の歯科臨床でも稀なことではないにもかかわらず、インプラントにおいてはことさら過大に問題視され、いわゆるインプラント否定論につながっていることは残念なことである、インプラントが口腔内で正常に機能しつづけ、患者さんの満足を得るためには、歯科的健康を維持するためのあらゆる努力が必要であり、これらの不十分な対応が不快症状の原因となっていることに目を向けなくてはならない。 しかし10〜20年の長期にわたるインプラント埋入の結果の骨吸収はどのような理想的な治療を行ったとしても起こりうる可能性がある。
これらは支台歯として利用された歯牙の動揺、補綴物の合着の離脱などと連動して起こるものが多い。 こういった場合はインプラントの撤去が必要で、撤去後に利用できる骨が存在する場合は図9のように解決することができる。また骨の欠損部にはアパタイトなどによる修復も同時に行う、骨膜下インプラントヘッド直下の骨吸収はよく起こるが、軽微な場合は不良肉芽の掻爬とアパタイトの填入、粘膜の再付着手術や、レイムスインプラントを再インプラントすることで解決することもできる。インプラントの失敗を避けるためにも、またインプラント処置後の思いがけない症状の悪化を防ぐうえからも、患者さんとのコミュニケーション、リコールなどの術後管理は非常に大切である。経験豊かなインプラント専門医はさまざまな状況に対応し、長期にわたって口腔内でのインプラントを機能させる役割を荷なっている。インプラント埋入した口腔内をいかに長期にわたり、メインテナンスしていくのかということが、今後のインプラント臨床で求められる課題であろう。さらに骨の再生のメカニズムの研究が近年、すばらしい成果を上げつつあることは、歯槽骨を中心とした外科処置に新しい可能性を与えていることは前に述べた通りである。 |