今から約45年程前、スウェーデンのとある研究室で実験用チタンチャンバーが生きた、骨と結合する事を発見したブローネマルク先生が歯科用インプラントの開発をした事が、今日の骨結合型インプラントの最初とされています。 これが近代インプラントのスタートと言っても良いでしょう。
私はスウェーデンイエテボリ大学のブローネマルククリニックに単身留学したのが1990年の時で29才の時でした。 あの頃は若かった。何でも吸収できた。 現在2006年あれから16年たった今インプラントも第三世代をむかえようとしているインプラントも年々改良が加えられ、いかに良く骨とくっつけるか、いかに早く加重(噛む事)がかけられるかといった様に研究開発にしのぎをけずっています。
ここからは30才以後の先生は読まないで下さい(ずい分と偉そうだなと言われそうなので)忘れないでほしい事があります。 どんなに研究開発が進んで、世にもすばらしいとみんなが絶賛する程のインプラントができたとしても、『しょせんは人間が人間の手で同じ人間の体の中に入れる事を・・・』私が留学した時に教えられた言葉です。 きっとこの文章は患者さんも読んでおられる事でしょう。かまいませんのでどうぞ目を通して下さい。
患者さんが好むキーワードです。 安い・・・安心の・・・信頼の・・・早くて安全・・・強くて丈夫・・・丈夫で長持ち・・・どんな方でも・・・リスクはありません・・・ 完全無痛の・・・安心保証・・・完璧な・・・その日のうちに・・・心配ご無用・・・お気軽に・・・etc どんな事でも人間のする行為に100%はありえないのです。 ただ常に100%に近づけようと努力する人と、そこまでしない人はいます。
それから患者さんの状態はどうでしょう。 身体心的な問題、骨が薄かったり、少なかったり、柔らかかったり、血液がどろどろだったり、ホルモンに異常があったり、アレルギー体質だったり、歯科治療の恐怖症だったり、重度の進行性歯周病だったり、ブラキシズム(歯ギシリ)があったり、クレンチング(くいしばり)があったり、歯ブラシができたりできなかったり、ヘビースモーカーだったり、予約を守ったり守らなかったり、血圧が高かったり、低かったり、血糖値が高かったり、生活習慣がなおせなかったり、過食症や嘔吐症だったり、精神を病んでいたり・・・ 歯科的健康感が喪失していたり・・・etc・・・
どんなに優れた、よく結合するインプラントであっても、これらはみなインプラントの予後を大きく左右する項目なのです。 どの位もちますかの答えに一概に何年もつとははっきりとは言えない・・・と実に歯切れの悪い言葉がかえってきます。 私は自分の患者さんにはこう答えています。 “お互いに健康で元気な内は大丈夫ですよ。そのかわり年3回のメンテナンスにはかならず来るように。いいですね”とこれからインプラントを始めようとされている若いDrや歯科大生の諸君、いいですか。 インプラント治療はメンテナンスとセットで行って下さい。患者さんたちは安いな言葉におどらされてしまいます。 患者さんご自身の側の問題点にはまったくと言っていい程に気づいていません。それを逆手にとってはいけません。 メンテナンスを通じて長き時間をかけて、患者さんご自身が気づいていない弱い部分を補い、より良き人間関係を構築して下さい。患者さんご自身が気づいていない精神の問題や肉体の問題に目を向け、リスクに対して患者さんとともに考えてあげれる良き友人となっていただければ幸いです。 |