「歯科治療」というと、まず何が思い浮かんでくるでしょう。自分がこれまでに経験した歯科治療の中身によって、人それぞれに連想するものが違うと思いますが、やはり「痛い」、「怖い」などのマイナスイメージが最初に浮かんでくる人の方が圧倒的に多く、「楽しい」、「快適」だと思う人は少数派でしょう。最近では治療技術や治療に対する考え方の進歩によって、以前に比べると随分「快適」に治療が受けられ、なかには歯がきれいになったり、よく噛めるようになって「楽しい」と感じている人も多くなっています。今後ともそういう人が増えて、「怖い」から治療を受けるのが遅れ、症状が進んでしまう人が減るように、私たち医師の一層の努力と患者さんのご理解が必要だと感じています。
ところで、一口に歯科治療といっても、数多くの側面を持っています。むしば(う蝕)の治療を例に取ると、虫歯を取り除いて詰め物をしたり冠をかぶせたりする治療もあれば、神経(歯髄)の治療もあります。あるいは、歯槽膿漏(歯周病)の治療では歯石を取ったり、歯ぐき(歯肉)の整形をしたり、噛み合せの調整をしたりします。また、どうしても残せなくなった歯を抜いたり、義歯を使いやすくするために顎の骨を整形したりする口腔外科の治療もあれば、歯が抜けた後にブリッジや義歯を作って再び噛めるようにする補綴治療もあります。このほかにも歯科治療には数多くの種類がありますが、これらすべての治療が最終的にめざすものは、あなたのお口の機能と審美性を回復し維持することなのです。
このような歯科治療の中で、インプラント治療は、う蝕や歯周病の治療と同じように位置づけて考えることができます。つまり、歯科治療の目標である口の機能と審美性を回復し、維持するための治療法のひとつだといえます。例えば、歯を失った患者さんの治療を考えるとき、歯を失ったパターンや骨と歯肉の状態、またその他の要因によって状況が異なります。ですから、インプラント治療が行えるようになったことで、ある人には従来のブリッジや義歯の治療が適し、またある人にはインプラントのブリッジやインプラント支持の義歯が適しているというように、考える選択肢が新たに加わったわけです。 |